Latin Playboys、King Garbage、Royal Dust をつなぐ「汚しの美学」
ザラついた音の職人たち
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2026.
09.27
90年代ロサンゼルスのチカーノ・ロック、2020年代アメリカ南部のガレージ・ソウル、そしてベルリン拠点のヴェネズエラ人ドラマーによるジャズ/エレクトロニカ。時代も土地もジャンルもばらばらな3組ですが、並べて聴くと同じ血が流れているのがわかります。
どれも、ルーツ音楽を素材にして、それをスタジオで一度ばらし、手触りを残したまま組み直している。今回はこの3組に共通する美学を、実際の音を聴きながら3つの視点で読み解いてみます。
3組のプロフィール
Latin Playboys ― カセット4トラックから生まれた前衛ルーツ・ロック
Los LobosのDavid HidalgoとLouie Pérez、そしてプロデューサーのMitchell FroomとエンジニアのTchad Blakeによるバンドで、1990年代に活動しました。はじまりは、Hidalgoが自宅のカセット4トラックで録ったデモ。本来はLos Lobos用の素材でしたが、Froomが「これはこれで作品になる」と判断し、サイド・プロジェクトとして独立させました。
残したアルバムは1994年の『Latin Playboys』と1999年の『Dose』の2枚だけ。下の「Manifold de Amour」は映画『デスペラード』のサントラにも収録された、2分ほどの小品です。
Latin Playboys「Manifold de Amour」(1994年『Latin Playboys』収録)
King Garbage ― グラミー職人デュオの「ジャンクヤード・ソウル」
ノースカロライナ州アシュヴィルを拠点にするVic Dimotsis(ボーカル/ドラム)とZach Cooper(ギター)のデュオ。ソウル、ガレージ・ロック、ヒップホップ、ローファイなモータウン、サイケがかったR&Bをごちゃ混ぜにした、ジャンル分けしにくい音を鳴らしています。
2017年のデビュー作『Make It Sweat』のあと、Mike PattonのレーベルIpecacに迎えられ、2022年に2作目『Heavy Metal Greasy Love』を発表。先行シングルの「Busy On A Saturday Night」は、フラメンコ風のつま弾きギターとホーン、ファルセットのボーカルが絡む、スロウでもやもやしたソウル・バラードです。
King Garbage「Busy On A Saturday Night」(2022年『Heavy Metal Greasy Love』収録)
Royal Dust ― ベルリンのヴェネズエラ人ドラマーによるフィルム・ノワール音響
ヴェネズエラ出身のドラマー/プロデューサー、Miguel Toroのプロジェクト。ジャズ、エレクトロニカ、シネマティック、フィルム・ノワール、サウンドデザインを掲げ、ドラム、シンセ、ペダル、サンプラー、クラリネットを操ります。2013年のデビュー作では、ホーン以外をすべてToroひとりで演奏しています。
2022年の『The State of this Monster』は、全盲の俳優たちが出演した舞台のために書いた音楽がもとになったアルバム。ジャズ、エレクトロニカ、グリッチ、ポストロックが入り混じる、より彫りの深い作品になっています。
Royal Dust(2022年『The State of this Monster』より)
共通点1:「埃」と「屑」の質感
そもそもバンド名に「Garbage(屑)」と「Dust(塵)」が入っているのが象徴的です。3組とも、ピカピカに磨いたハイファイではなく、手触りが残ったザラザラの音を選んでいます。
Latin Playboysのデビュー作は、Hidalgoのスケッチに、Pérezが詞とリズムを乗せ、FroomとBlakeがサンプルや楽器で肉付けするという流れで作られました。技術的な制約のなかで、最小限の編集で仕上げたからこその、完成しきっていない瑞々しさがある作品です。
King Garbageの『Heavy Metal Greasy Love』も、ざらついたギターに、音程を揃えずに吹き鳴らすホーン、普通のドラムと廃品を叩いたようなパーカッションが混ざり合う音。ドラムはコンクリートの倉庫で録ったみたいな鳴り方をしています。
Royal Dustは自分たちの音を、Tom Waits、Morphine、Stan Getz、Colin Stetson、Mulatu Astatkeらが、星空の下の砂漠で混声合唱しているフィルム・ノワールの一場面、と説明しています。この並びを見るだけで、どういう手触りを大事にしているかがよくわかります。
共通点2:ルーツ音楽を「なぞらず」に「組み直す」
3組とも、伝統音楽をそのまま再現しようとはしません。スタジオで一度ばらして、組み直しています。
Latin Playboysは、ブルースやボーダー・ミュージックを、実験的なスタジオの仕掛けや映画的な音響と混ぜ合わせ、ねじれた前衛ルーツ・ミュージックにしました。King Garbageは、初期モータウンやDaptone的な荒いガレージ・ソウルを下敷きにしながら、「Let Em Talk」では90年代ヒップホップ的なドラムの鳴りを持ち込み、クラシック・ソウルを今のビート感覚に置き換えています。
Royal Dustの素材は、ヴェネズエラの伝統音楽とアフロビート。ToroはTony Allenの実験的プロジェクトAfrobeat Makersで作曲・編曲に関わり、ヴェネズエラ伝統音楽のリミックスも手がけています。身体に染みついたグルーヴを、エレクトロニクスとグリッチで分解しているのがRoyal Dustの音です。
共通点3:表舞台ではなく「裏方職人」の実験室
3組目の共通点は、中心にいるのがフロントマンではなく、ふだん他人の作品を支えている職人たちだということ。
Latin PlayboysのFroomは60枚以上のアルバムをプロデュースし、Los Lobos『Kiko』などでグラミーのプロデューサー・オブ・ザ・イヤーにノミネートされた人。相棒のBlakeは、2本のマイクで立体的な音場を作るバイノーラル録音の使い手として知られています。
King Garbageの2人は、Jon Batisteのグラミー最優秀アルバム『WE ARE』へのソングライティング参加でグラミーを受賞。Leon Bridges『Gold-Diggers Sound』収録の「Sweeter」の共作や、SZA、Travis Scott、The Weekndらの楽曲にも関わっています。
Royal DustのToroも、Olafur Eliassonやバウハウス・デッサウのためのサウンドデザイン、舞台音楽などを手がけてきた裏方のプロです。
メインストリームの第一線で職人として働く人たちが、自分の名義ではとことんマニアックな音響実験をする。この構造が3組ともそっくりです。
結節点としてのTom Waits
3組をつなぐ補助線として、Tom Waitsを置いてみます。Royal Dustは自分の音を説明するときに真っ先にWaitsの名前を挙げていますし、King GarbageのVicも「Busy On A Saturday Night」の世界観を語るなかでWaitsに触れています。Latin Playboysのデビュー作も、Harry PartchやThe Residents、Waitsの系譜に置かれて語られてきました。
その象徴的な1曲が、1999年『Mule Variations』の「What’s He Building?」。歌ではなく語りで、自宅の納屋で録られたといわれるこの曲は、隣人を覗き見る語り手の妄想が、金属のきしみやノイズのなかで膨らんでいきます。Ken Nordineの「ワード・ジャズ」へのオマージュでもあり、ありふれた物音を組み直して作った、音響作品のひとつの到達点です。
Tom Waits「What’s He Building?」(1999年『Mule Variations』収録)
この順番で聴いてみてほしい
生楽器のざらついた手触りから、だんだんと電子音響の深みへ沈んでいく流れで並べてみました。
- Latin Playboys「Manifold de Amour」
カセットの歪みが残る、怪しげな導入。 - King Garbage「Let Em Talk」
空気はそのままに、重たいドラムとバリトン・サックスのグルーヴへ。 - Royal Dust「Brownwood」
ホーンが絡む生演奏から、エレクトロニクスの深みへ。 - Tom Waits「What’s He Building?」
物音と語りだけの、音響作品で締めくくり。
まとめ
生演奏のルーツ(ラテン、ソウル、ジャズ)を、職人たちがスタジオでばらして、ザラついた手触りのまま組み直す。3組に共通する気持ちよさはここにあります。
3組ともぐっとくる耳は、たぶんジャンルではなく「手触り」で音楽を選んでいるんだと思います。気になったら、ぜひレコードで。

























































